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複数センサを用いた移動経路上の利用者コンテキスト認識機構の研究開発

中村 友宣, 大阪大学大学院 修士学位論文, Feb. 2008.

論文概要

科学技術が進歩し小型で高性能な携帯端末が普及するにつれて,人々の日常的な移動時間の過ごし方が変化してきている.例えば街中を歩きながら音楽プレイヤを用いてヘッドホンから流れる曲を聴いたり,乗り物の中で座りながら映像プレイヤを用いて動画を観賞したりする姿がよく見られる.中でも,そうした携帯機器を用いて移動中に語学コンテンツなどの学習をすることは毎日の限られた時間を自己の能力向上に利用する有効な方法であり,毎日繰り返すことで学習効果が高まるため多くの人が実践している.しかし,例えば音声のみの設問と映像のある設問の2 種類がある外国語の聴解力テストを学習する場合に,何も考えずに回答していると映像のある設問だけが残り,歩いているときに学習を行えず時間を無駄にしてしまうという問題が起こり得る.映像のある設問を優先的に回答しておけばその問題は生じないが,利用者自身が自分の状況(利用者コンテキスト)から現在何を学習できるかに常時注意して学習コンテンツや携帯機器を切り替えるのはわずらわしく,非効率的である.そこで本研究では,移動中の利用者の状況に応じた学習を支援するシステム(以下,ウェアラブル学習システムと呼ぶ)の構築に取り組む.提案システムでは,利用者が今どのような学習内容や関連情報を必要としているか,またどのような学習方法を利用できるかを自動的に判断して学習コンテンツの提示内容や提示手法を動的に変更することで継続的な学習が可能な環境を提供する.本稿では,ウェアラブル学習システムの基礎となる複数のウェアラブルセンサを用いた利用者コンテキスト認識機構を提案すると共に,試作したシステムで認識性能の評価実験を行った.試作システムでは,複数のウェアラブルセンサを用いて通学中の利用者の動作,立位時の場所,及び電車内の混雑度を認識している.具体的には,まず利用者の動作は足に加速度センサを装着し,大腿部前面から後面に向かう軸の動的加速度と静的加速度をフーリエ変換し,得られたパワースペクトルを識別器であるサポートベクターマシン(SVM)を用いて認識している.次に立位時の場所は肩に上向きに取り付けた超音波センサを用いて天井高を計測し,過去1 秒間の中央値でノイズを除去した後にSVM で認識している.最後に電車内の混雑度は二酸化炭素センサを用いて車内の二酸化炭素濃度を取得し,同様にSVM で認識している.更にそれぞれの認識結果に対して各状態間の遷移のし易さという概念を適用することでランダム誤りの軽減を試みた.また,試作システムの有効性を検証するために行った評価実験では,被験者が自宅から大学まで実際に通学する行程に対する再現率と適合率を求めた.その結果,利用者の動作の認識は再現率が最低でも「歩く」の94.8%と高い認識精度であることがわかった.立位時の場所は駐輪場を電車内に間違えるという想定外の状況を除いて高い精度で認識が行えていた.電車内の混雑度は「空いている」車内の認識の再現率は100%であったが,「混んでいる」車内の再現率は65.3%と低めの結果であることが明らかとなった.ウェアラブル学習システムのための利用者コンテキスト認識全体としては,一部の状況を除いて高い認識精度が得られることがわかった.

関連論文

  • "二酸化炭素センサによる鉄道車内混雑度推定を用いた ウェアラブル学習システムのための利用者コンテキスト認識", 電子情報通信学会 技術研究報告, MVE2007-89, Mar. 2008. (pdf file)
  • "利用者コンテキスト認識における電車内外判定に関する検討", 情報処理学会 マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO)論文集,Vol. 2007, No. 1, pp. 1496-1501, Jul. 2007. (pdf file)
  • "連続的なウェアラブル学習システムのための利用者コンテキスト認識機構の実装と評価", 電子情報通信学会 技術研究報告, MVE2006-66, Nov. 2006.
  • "連続的なウェアラブル学習システムのための利用者コンテキスト認識機構の設計と実装", ヒューマンインタフェースシンポジウム, pp. 979-984, Sep. 2006. 
  • "ウェアラブル学習システムのための利用者コンテキスト認識機構", 電子情報通信学会 総合大会講演論文集, A-15-25, Mar. 2006.
  • "ウェアラブル学習システムのための利用者コンテキスト認識機構の設計と実装", 大阪大学 特別研究報告, Feb. 2006.